最終章

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シャクシャクシャクシャク…こくん。

シャクッ。

シャクシャクシャクシャク…こくん。

シャクッ。

「シャクシャクシャクシャク…こくん」

「自分で効果音言うなよ。…ほら、口から飛び出してんだろ
。汚ねぇな」

「ほらユン、早く剥いてー。この林檎、思ったより美味しい」

「それは良かったな。それより…」

「そろそろ流麗って呼んでくれって??やぁだよ。おれっちにとっては、ナガレは一人だけだもん。ユンは、ユン」

「…ああ、そうかよ」

それも仕方ないか。

諦めて溜め息をつき、ナイフと芯をとっていない林檎を手にする。

…なにやってんだ、おれは。

「…今日はあいつ、来ねえな」

「ああ、茘枝??もう来たよ」

茘枝はあれから毎日、

「ほんっっっっとーっにすみませんでした…!!ハクア様、僕のせいでウンヌンカンヌン…」

と、謝りにくる。

「今日も来たから、毎日よく来るねってねぎらって、林檎一個あげたの」

「おめでとう。ほらよ」

剥き終わった林檎を、ハクアの口に突っ込む。

「はぐっ!!…ほうひょっこひゃひゃひくへきあいはけ??」

「もうちょっと優しくできないわけ、って??」

非難がましい目でユンを睨み、ハクアはこくこくと首を縦に振る。

「お前は今まで、思う存分甘やかされてきたんだよ」

「う~う~シャクシャク…ゴックン!!そういえば、南地区の技術って、最終的にはど こまで発達したんだろうね」

南地区は今、新たな長によって統治されている。

「さあ、おれもよくは知らない。だけど、生まれたばかりの子供をわずか三ヶ月で成人に成長させることはできたみたいだ」

「…ああ」

小野田憲一という名前を思い出し、ハクアは妙に納得した面持ちになる。

「なるほど、だから…」

『バタン』

急に部屋の戸が開き、ユンがすかさずナイフを放り出して拳銃を構える。

「…なんだ、お前か茘枝。…今日はもう来たんじゃなかったのか」

銃を腰に戻し、茘枝に歩み寄り…

「…うわ、お前酒臭ッ!!」

ユンは激しく顔を顰めた。

「ユンー…助けてー…僕…吐きそう……」

「おい、一瞬待て、バカ!!」

慌ててユンが差し出したゴミ箱に、茘枝は思い切り嘔吐した。

「…一体なんなんだよ、おれは…」

茘枝の背中をさすってやりながら、溜め息をつく。

でも、こんな波瀾万丈な一日一日が、楽しい。

そう感じるようになった。

一通り吐き終わった茘枝が、ふっと顔を上げてぼんやりと呟く。

「あれぇー、僕って昨日、ユンとお店屋さんごっこするんだっけー…」

「意味分かんねえよ。時制バラバラだろ」

「バラバラー…??僕とキミは、まだ繋がってるよねぇー??離れないよねぇー??」

「…お前、そっちのソファ行って寝ちまえ。うるさいから」

茘枝は素直にソファにごろんと横になると、くう…と寝入ってしまった。

「彼も、精神的に結構まずいねぇ」

ハクアが、そんな茘枝の寝顔を眺めながら言う。

「ハクアもだろ」

「ユンもね。…思ってたんだけどさあ、ユンが“復讐したいから”とかって言ってたのも、あれも全部演技だったの??南地区についてか ら清水兄弟としてた
会話も??」

「…まあ」

「おれっちを守るために、言ってたんだぁ??」

「……まあ。あいつらはきっと、楽しむためにおれと話を合わせたんだろうな」

「でもやっぱりユンは、優しいねぇ…!!」

「買いかぶんな!!気持ち悪いな」

鳥肌の立った腕をさする。

窓際に立って外を眺め…

「あ」

「どうしたの、ユン」

「…ハクア様、レイナさんがいらっしゃいましたよ」

にやっと笑って、そう告げてやる。

「ほんとに!?」

ハクアはがばっと立ち上がって、飛び出して行った。

数秒後。

「レイナちゃん」

「ハクア様!!」

「よく来たね!!」

「もう、ハクア様に会うためなら、火の中雨の中ですよー」

賑やかな声が聞こえてくる。

あのなあ、仕事しろよ。

ハクアのデスクに積み上げられた書類の束。

その横に、二体の人形があった。

「…変態野郎が。しかも…禿げてんじゃん」

人形の髪を手櫛でとかしてやる。

「ハクア様、お忘れですよ」

外に向って呼びかけ、眼下のハクアへ人形を投げ落とす。

「あー、ばかあ!!」

慌てて受け止め、ブーイングをするハクア。

悪戯っぽく笑うユン。

すやすやと眠る茘枝。

微笑ましく見守るレイナ。



偽りの太陽は、今日も彼らを照らしている。






+ 「終」+







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